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Does the dog have "itch"?

ワンちゃんの皮膚と「かゆみ」

ワンちゃんの皮膚は人間より薄い

ワンちゃんの皮膚は、人間と同じく表皮・真皮・皮下組織の三層構造をしています。表皮の外側にある「角質層」は、刺激や乾燥などから体を守るバリアの働きをしています。
ワンちゃんは、この表皮が人間の1/5程度の厚みしかありません。ワンちゃんの皮膚は、人間より薄いデリケートなものなのです。

弱アルカリ性で細菌が繁殖しやすい

人間の皮膚はpH5.1~5.5の弱酸性ですが、ワンちゃんはpH7.2~9.0の弱アルカリ性です。この弱アルカリ性は、細菌などの病原体が繁殖しやすい環境で、皮膚病にかかりやすいのです。

皮膚のターンオーバーが短い

表皮の一番下にある基底層は、新しい細胞を作り出します。細胞は徐々に角質層まで押し上げられ、最後にははがれ落ちます。これは皮膚のターンオーバーと呼ばれ、人間の場合は約28日サイクルですが、ワンちゃんは約20日と短いサイクルです。
このターンオーバーの周期が何らかの原因で短くなると、新しく作り出される細胞が不完全なままフケとなり、はがれ落ちます。皮膚病を引き起こす細菌は、このフケをエサにしています。ターンオーバーの周期が短くなりエサが増えると、細菌は繁殖しやすくなります。

「かゆみ」の原因となる皮膚疾患

かゆみの原因を探す ―診断方法―

かゆみの原因と皮膚疾患

寄生虫が原因の皮膚疾患

疥癬、毛包虫症

疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫)、毛包虫症はイヌニキビダニ(毛包虫)が皮膚に寄生することでかゆみを引き起こします。

細菌や真菌が原因の皮膚疾患

膿皮症、マラセチア皮膚炎

膿皮症は皮膚に付着している細菌が原因となってウミがたまり、マラセチア皮膚炎は真菌(カビの一種)が原因で皮膚が脂っぽくなります。

アレルギーが原因の皮膚疾患

ノミアレルギー

ノミの唾液に対するアレルギー反応です。ノミが繁殖しやすい春先から夏にかけてみられます。

食物アレルギー

食物中のタンパク質や炭水化物などの成分に対しておこるアレルギー反応です。1歳未満の比較的若いワンちゃんに多くみられます。

これらの皮膚疾患が原因ではない場合、かゆみの原因はアトピー性皮膚炎である可能性が高くなります。

アトピー性皮膚炎とは

かゆみが強い場合に疑われる皮膚疾患

ワンちゃんの「かゆみ」の原因が、ダニ、細菌・真菌、ノミ・食物アレルギーではない場合には、アトピー性皮膚炎が原因である可能性が高くなります。ワンちゃんのアトピー性皮膚炎には、次のような症状がみられます。

ワンちゃんが長い間アトピー性皮膚炎にかかっていると、症状が全身に広がることがあります。とてもかゆいので、体を舐めたり引っ掻いてしまい、毛が抜けたり、皮膚の表面がむけてしまう、といった症状がみられることもあります。慢性化すると皮膚が黒ずんだり厚くなったりします。一般的に、アトピー性皮膚炎は完全に治すことが難しいと言われていますが、現在は薬での治療などによって、病気とうまくつきあっていくことができます。

好発犬種

アトピー性皮膚炎は遺伝的要因などが関係していると考えられており、アトピー性皮膚炎にかかりやすい犬種(好発犬種)が報告されています。

柴犬、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、ゴールデン・レトリーバー、シーズー、ヨークシャー・テリア、ビーグル、ラブラドール・レトリーバー、マルチーズ、フレンチ・ブルドッグなど

アトピー性皮膚炎の原因

ワンちゃんの体の中では、侵入してきた異物を退治しようとするしくみ(免疫)がはたらいています。アトピー性皮膚炎と診断されるワンちゃんは、環境中に存在するアトピーの原因物質(アレルゲン)に対して免疫が過剰にはたらいている(アレルギー反応)と言われています。

アレルギーの原因物質(アレルゲン)
ワンちゃんのアレルギー反応は、ダニ、ノミ、ハウスダスト、花粉、カビなどが原因物質となり引き起こされます。これらは日常生活における環境中に潜むものであるために、排除することは難しく、そのためアトピー性皮膚炎と診断された場合には、適切な治療を継続していくことが必要になるのです。
かゆみのしくみ

皮膚の水分や脂分が不足するなどして皮膚が弱っていると、異物の侵入を防ぐ機能が低下して、アレルゲンが体内に入り込みやすくなります。その結果、アレルギー反応が起き、ワンちゃんのかゆみの原因となっています。

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療にはさまざまな方法があります。完治は難しいと言われていますが、放置しておくとワンちゃんの症状はどんどん悪化していきますので、早めに適切な治療を始めることが大切です。

アトピー性皮膚炎の主な治療法
方法 剤型 はたらき メリット デメリット
シクロスポリン 経口 アトピー性皮膚炎の原因の1つである週剰な免疫のはたらきをブロックしてアレルギー反応を抑えるおくすり。
皮膚の症状を改善し、かゆみを軽減します。
単独治療でも効果が高い
ステロイドと比べて全身性の副作用がでる確率が低い
動物用医薬晶としての長い実績があり、安全性が確立されている
嘔吐・下痢怠どの胃腸障害がみられることがある(多くは一過性) 効果が実感できるまでに時間がかかる(2~4週間程度)
症状が安定した後は、7割程度の症例で投与量を減らすことできる
ステロイド製剤 経口 かゆみと炎症を抑えるおくすり。 即効性がある
いくつかの強度 から選べる
価格が安い
長期使用で様々な全身性の副作用を引き起こす可能性がある
使い続けると効果が薄れることがある
外用 全身療法に比べて安全性が高い
患部に直接塗布できる
被毛がある部分には使いにくい
犬が舐めとってしまう
使いすぎると皮膚が薄くなることがある
オクラシチ二ブ 経口 かゆみを伝達する物質をブロックするおくすり。 かゆみに対する即効性がある
ステロイドと比べて全身性の副作用がでる確率が低い
まれに一週性の嘔吐・下痢がみられることがある
比較的新しい製品のため長期安全性についての情報が少ない
減感作療法 注射 アレルゲンを少しずつ注射して体を慣れさせ、アレルギー反応を起こしにくい体質を作ります。 体質改善を目指すため完治の可能性がある
副作用がでる確率が低い
治療前にアレルゲンを特定する特殊な検査が必要
頻繁な注射が必要(特に治療開始初期)
まれに効果が得られない場合がある
インターフェ口ン製剤 注射 偏った免疫のバランスを調整し、アレルギー体質の改善を目的としたおくすり。 副作用が少ない 注射が必要
効果の発現に時聞がかかる
慢性化した重症例には効果が弱い可能性がある
必須脂肪酸 フード、サプリメント、外用、シャンプーなど 免疫のバランスを調整したり、皮膚のバリア機能を高めるはたらぎがあります。 フードやサプリメント、保湿剤芯どによって補います。 皮虜・被毛の健康維持
おくすりではないため安全性が高い
効果がでるのに時間がかかる
補助的な治療法
薬用シャンプー シャンプー アレルゲンや細菌などの異物を除去することで皮膚を清潔に保ちます。 また、保湿成分などの配合により、皮膚のバリア機能を高める製品もあります。 副作用がほとんどない
患部を直接ケアできる
種類が多様で皮膚の状態に合ったものを選べる
頻繁に行う必要がある
(自宅で)正しい方法で行うのが困難
補助的な治療法

上記の図は横にスライドできます。

アトピー性皮膚炎の犬の経過と治療

アトピー性皮膚炎は生まれつきの体質が関わっていますが、子犬の頃には症状が出ないことが多いです。最初は外耳炎や湿疹など一時的な症状のみですぐに治ることが多いですが、徐々に全身に広がって症状が重くなっていきます。

全身の症状を抑える治療として主に使用される3つのお薬があります。どのお薬が合っているかはワンちゃんの状態や季節などによって異なります。

  • アトピー性皮膚炎は完治が難しく、治療が長期にわたる病気です。
  • 無理なく治療するためにも、続けることが難しい場合は先生に相談しましょう。

    -飲ませ続けていいのか不安

    -なかなか減量できない

    -併用する薬が多く大変

    -副作用が心配

  • 薬を減らすためには日常のケアも重要です。

アトピー性皮膚炎と上手につきあっていくために

アトピー性皮膚炎は、完治することが難しい病気です。
しかし、長い時間をかけてじっくりと治療することで、かゆみなどの症状をコントロールすることができます。ワンちゃんのかゆみを和らげて、オーナーさんと楽しく毎日を送れるように、かかりつけの獣医師の先生とよく話し合い、気になることがあればすぐに相談するようにしましょう。

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